2010年10月17日日曜日

モノづくりをする時に方向性を1つ統一していく機能が必要。浦沢直樹のプロフェッショナルを見て感じたこと

02:46 mins - この記事を読むのにかかる時間

プロフェッショナル-仕事の流儀、再開しましたね。
ぼくの大好きな番組です。

ちょうどテレビが壊れていて松本人志特集は見れていないのですが、
兄に録画を予約しているのであとから見る予定です。

さて、浦沢直樹のプロフェッショナルをiPodに入れていて、よく見返しているのですが、これを見ていて感じたことを今日はまとめてみました。

たくさん示唆に飛んだ回だったので、ぼくが面白いな、と感じた点をポイントに絞って書いてます。面白かったら本編も観てみてください。おすすめです。


※見返さなくても記事書けちゃうぐらい何度も見てるのでそらで書いてみます。w

漫画の神様の前で素直

浦沢漫画には、「長崎尚志」というブレーンがいて、この人とお話しながらスケールの大きなお話を漫画というフォーマットに収めています。書きあがった原稿に関してもこの人にFAXで送ってみてもらっています。

PLUTEの原稿を書いていて、ロボットが机を叩くシーンがあるのですが、もともと浦沢直樹が書いた「バーン」という表現を「トン」と手を置く表現に変えて欲しい、というリクエストがブレーンから入りました。浦沢直樹は既に完了していた原稿であるにも関わらず修正する、というシーンがあり、印象的でした。「直します。ぼくも人間っぽすぎるかなぁーと思ってたんですよ」という氏のコメント。

最初このシーンを見たときは、なんだ結局直しちゃうんだ、ぐらいに思ってしまったのですが、その後のインタビューでちょっと見方が変わります。

長崎尚志のインタビューで「いろんな漫画家がいるんですが、あの人は変なこだわりというものはないんですよ。自分のこだわりではなくて、漫画の神様というものがいたらその神様に対してものすごく素直な人なんですよ」ということでした。

いろんな目線があると思います。作家の視点、ブレーンの視点、読者の視点。ぼくらみたいなウェブの仕事だったらユーザーの視点やデザイナーの視点、プログラマーの視点。この人は神様、という表現をしていたけど、ひとつ上のメタ的な視点から作品を見下ろして、それに対して忠実でいる、という姿勢はすごく重要なんじゃないかなと感じました。

もっと具体的に言うと、クライアントの意見や関係値とか、お金とか、工数とか、色々な要素で作品が歪んでいくんだけど、これをいかに歪めないでもとある方向でいるべきか、ということを考える必要があります。俯瞰して作品を見たときに、例えば、WEBの神様がいたときにこれに忠実にしているのか、ということを考えながら方向性を調整する役割や機能が必要があると感じました。

空前絶後の大傑作をいかに小さくしないか

漫画の制作工程では、一番最初にネームと呼ばれる大まかな構成を書くお仕事があります。完全にまっさらな白紙に、漫画の構成を書いていく。一番漫画家のセンスが生きる作業です。

この作業を浦沢直樹は「最初物語を思いついたときには空前絶後の大傑作なんですよ。これが形にしていくうちに若干小さくなっていく。これをいかに小さくならないようにするか、っていう」という表現をしました。

ああ、すごくそうなんだろうなと感じました。ぼくもよくお仕事でサービスを思いついたりなんかすると、ワイヤーフレームを書いてみるのだけど、手書きで白紙にワイヤーフレームを作っていると、最初考えていた空前絶後の良サービスだったコンセプトが若干小さくなっていくんです。どうすれば小さくならないようにするか、という作業、という捉え方はできるなと感じました。

今までにない物事をはじめようとするときにはいつも同じ葛藤が生まれるんじゃないかなと感じます。最初思いつくコンセプトは世の中をものすごくよくできるような大きなコンセプトを掲げているものです。でも、実際に形にしていくうちに、現実的に無理なポイントとか、表現力とか、いろんな制約で少しずつ小さくなってしまいます。

最初のコンセプトは壮大なものだと思うのだけど、これをいかに小さくしないか、という工程がサービスの成否に関わると思います。

心のままに行け。最後はきっとうまく行く(going going gone)

浦沢直樹はボブ・ディランが好きです。

ぼくは詳しくないので知らなかったのですがボブ・ディランは一時期フォークからロックに転向して、ファンからたくさん罵声を浴びたことがあるそうです。そのコンサートで、ボブ・ディランは罵声の中ロックを歌い続けます。

この生き方にすごく共感しているのだそうです。

YAWARAがすごく売れて人気になった作家だったのですが、本当は人間の深みや本質に迫るような作品が描きたかったそうです。でもファンはYAWARAのようなスポーツ漫画を求めていた。そこで生まれたのがHAPPY!というテニス漫画です。浦沢直樹はこの作品の中に人間の妬みや金など醜い部分をたくさん織り込みました。でも全然売れませんでした。ある時には「あの作品を見捨てていないのは浦沢だけだ」とまで言われたのだそうです。

でも作品のクオリティは高いと信じてその方向性を貫いてきました。
※個人的にHAPPY!好きなのでクオリティ高いとぼくも感じてます!

そんな時いつもボブ・ディランの見出しのセリフ「心のままに行け。最後はきっとうまく行く(going going gone)」を思い出したり、ライブの映像を見て「頑張らなきゃな」と自分を鼓舞していたそうです。

結果はご存知のとおり。
MONSTERや20世紀少年など人間の深い本質に迫る面白い作品を沢山生み出しています。

ファンが求める方向性にだけ突き進んでいると何か無難なものになってしまうんじゃないかなと感じています。だから、最初考えていた方向性や頭の中にあるイメージをきちんとありのまま形にしていくという機能が必要なんじゃないかなと感じました。

ものづくりに共通する考え方

以上の3点が心に残ったポイントなのだけど、漫画家に限らずモノづくりに携わっていると必ず意識するべきポイントなんじゃないかなと感じました。

特に感じたのは、モノづくりをするときにはいろんな関係者が関わることになるけど、上のようなポイントを全体として1つの意見に統一する役割や機能があることで1つ上のモノづくりができると思います。むしろこの機能がないモノづくりなんて量産以外の何の意味もないので、オーダーメイドが基本のウェブ制作ならもっと意識しても良いんじゃないかと感じました。

ちょうどウェブディレクターって他の職種とかぶることが多い仕事だし、実はなくてもいいんじゃないかな、と感じていたのだけど、これを見たときにウェブディレクターってやっぱり必要かもと思いました。上のようなポイントを外したモノづくりなんて量産以外に何の意味がないので、ウェブディレクターいなくてもモノづくりはできるけどやっぱりいたほうがいんじゃないかな、と感じたわけです。

この点は長くなるので別の機会で書いてみようと思います。

関連記事:ウェブディレクターって何をする職業なんだろう。考えてみた。

関連資料:
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