2012年5月14日月曜日

提案するWebエージェンシーと発注者のミスマッチ

02:39 mins - この記事を読むのにかかる時間

大規模なウェブサイト制作では、いくつかの制作会社を呼んでコンペになることがあります。

職業柄よくコンペに参加することになるのですが、過去の落ちたプレゼン、通ったプレゼンを見たり体験したりする中で、感じることがあります。

それはプレゼンで重要なのは正しさよりも共感だ、という点です。

提案で大切なのは正しさと思ってしまう罠

クライアントはAを課題と思ってるようだけど実はBに課題がある!だからBにテコ入れすべきなのです!という提言。

提案する側からするとバリュー高いなぁと感じますが、案外コンペで負けてしまったりします。コンペのプレゼン段階ではまだ仮説でしかないケースが多く、ファクトに乏しいため、クライアントの思い込みを排除するところまで1時間程度のプレゼンじゃ持ってけないわけです。

共感まで醸成できてはじめて意味が出てくるわけで、このタイミングで正しさを主張したってあんまし意味ないのだと思います。

そう考えていくとベンダー側にはクライアントのイメージを具現化して受け入れやすいメッセージに切り替えていくような提案が求められることになります。

プレゼンでのプライオリティ

こんなことを考えていくとプレゼンでプライオリティ高く話すべきイシューが少し見えてきます。
2者間でイシューとして認識している範囲を図にしてみました。クライアントのイシューにRFPが内包されています。
記載した数字がプライオリティです。
(※RFPとは)
  1. 注力して解決策を提示すべき点はあくまでもRFPであるべきだと思います。まずはクライアントが考えていることをよく理解している、うまく実現してくれそうだ、という回答を示さないと、次の提言も聞く耳持ってもらえないからです。
    こういう意味で、やはりRFPの撃ち漏らしは致命的です。
  2. クライアントからヒアリングをする中で共通して課題意識を感じる点があれば、この点は次のプライオリティで積極的に織り込むべきでしょう。この領域が少なければ少ないほど「ならでは」さやオリジナリティが失われて、刺さりにくくなります。
  3. この領域はクライアント側の業界特有のイシューだったり、会社特有のイシューだったり、ベンダー側でなかなか気づけないイシューです。提案時に盛り込むことは難しいです。一方で、クライアントの内情や業界に精通したメンバーがいるのならばこの領域にあるものが2の射程範囲内に入ってくるので提案に織り込むことで意義ある提案が期待できそうです。
  4. 前段で話したよく陥りがちなのがこの領域のイシュー。ベンダーが課題意識を感じる点のほうがWEBという業界に精通している経験則から来るものなので解決した場合の効果が高い可能性があります。しかしながら提案時にはプライオリティは下げておくべきと考えています。

求めるベンダーと選ばれるベンダーは必ずしも一致しない不合理

さて、ここまではベンダー目線で選ばれるための提案をどんなプライオリティで話すべきか、整理してみました。

逆に発注者側からするとこのプライオリティで話をされて、うまく選べるか、というと「どうなのかな」という気もします。

効果をあげてくれるベンダーと組みたい、と考えているにもかかわらず、選定には、効果をあげるかどうか、という軸ではなく、発注者の考えを具現化したかどうか、という軸になってしまいがちだからです。

ウェブへのリテラシーが高い発注者だった場合は、先程の図のイメージで言うところの2の領域は広がり、制作会社の言わんとすることや、提案のバリューが高いかどうかを本質的に見極められるようになります。しかしながら、それにも限界がありますし、ウェブのことは「?」といった発注者だった場合は、まさに求めるベンダーと選ばれるベンダーは乖離していくことになります。

共感がとても大切

最初こんな不合理な構造に気がついたときは、「これでよいのかな?」という違和感みたいなものを感じていたのですが、最近はこんなプライオリティで問題ないかなと思っています。

プレゼンで正しさを主張するより共感のほうが大切だと思うからです。

究極、お仕事で「これが正解」なんてやってみるまでわからないんだから、共感持ってその後頑張れるってことのほうが大事だ、と思うのです。
これが確からしい、というクリエイティブやシステムはその後ファクトを十分に持った段階でクライアントと一緒に考えていけばよいし、発注者側からすれば、一緒に考えていけそうだな、というベンダーを選べたらそれで良い話です。

おわりに

うだうだと最近感じることを書いてみたのですが、終わりに1点補足しておきたいことがあります。
とはいえ、これってプレゼンの内容にフォーカスした話でしかないってことです。

実際のコンペの場面では、内容より金額、金額より政治、というパワーバランスの中で決まってくるし、プレゼンする人のスキルセットや実績など面接のように思っている発注者も多いと感じます。

ただ、話の妥当性より共感が大事って場面は、割りとコンペの話だけでなくてチーム仕事では多いように思ったので、エントリーしてみました。

共感を持って頑張るチームのほうが仕事してて楽しいですしね。

※RFP
Request for Proposal 提案依頼書のこと。こんな提案をしてくださいというドキュメント。
詳細:RFP(@IT情報マネジメント用語事典)

---
「いいね!」を押すとあなたのfacebookにキャベツダイアリーの更新情報が届きます。よかったら。