2013年5月6日月曜日

ユーザーエクスピリエンスデザインに関する見解をまとめてみた

03:53 mins - この記事を読むのにかかる時間

以下のエントリーにはてぶでコメントをつけたところ、著者の方にRetweetして頂いたので、せっかくだからと思っていくつかTwitter上で意見交換させてもらいました。


そこでユーザーエクスピリエンスデザインの認識ってこういう感じなんだなぁ、とやけに納得させられるところがあり、全然知らない人もわかるように、UXDに関して自分なりの見解をまとめてみることにしました。

まとめを読んで頂くと@egachanのエントリーに対する見解もなんとなくわかるような構成にしてありますのでよかったらご一読ください。

UXDが叫ばれるようになった背景

最近あちこちでUXとか顧客体験といったことを聞くようになりました。
オウンドメディア、Webサービスはもちろん、ビッグデータ系のソリューションベンダーや、ビジネスインテリジェンス界隈をキーにSIerもそんなこと言ってます。

背景の1つには、企業のやり尽くした感が挙げられます。

PDCAサイクルを回す、という(100回聞いたぞ、というような)キーワードがあります。声高に叫ばれ出した頃からWebがビジネス上プライオリティの高い業態を中心にコストを投下してきました。うまく回すことが出来るようになった企業はSEO、リスティング、アクセス解析、マルチデバイス対応、LPO、EFO、など様々な切り口から改善を繰り返しており、効果も上がっています。
一方で、こうした企業にお会いすると、このPDCAサイクルの延長線上に大きな飛躍の未来を描けない、という共通の悩みを抱えていらっしゃいます。

今回トピックにあげたエントリー「データ分析、A/Bテスト病にかかってしまい考え方のスケールが小さくなっているのではないか」というメッセージはまさにドンピシャで、こうした悩みが大企業特有の悩みではなく、業界全体が抱える根深い悩みになりつつあるのだな、と感じます。

そんな課題意識に1つの視点として注目を集めているのがUXDです。

UXDとは

UXDとは "User EXperience Design" の頭文字を取ったものです。

UXD界隈はかなりアカデミックだったりするので、誰かに突っ込まれそうですが、平たく言うと、最初にモノありきでデザインするのではなくて、ユーザーとそのユーザーに体験して欲しいコトをデザインしてから、コトを実現出来るモノをデザインする、という手法です。

例えば、アキレスの「瞬足」。ご存知ですか?
左右非対称なので左回りのトラックを走りやすく、小学生が運動会でエースになれる靴として、大変ヒットしています。

この製品も左右非対称の靴(モノ)を作ろうとしたのではなくて、小学生(ユーザー)が運動会で速く走る(利用状況)ということを特定してから、そこに適した製品を作る、というアプローチから生まれています。

UXDの1つの特徴はトータルプロデュース

なぜ、そんなものが課題意識を払拭する1つの視座になりうるか、というと、ユーザーを中心にしてコンタクトポイントをトータルプロデュースするからです。

例えばスターバックスにとってこんな営業マンのニーズを満たすことがビジネス上重要だとしましょう。

15時頃得意先を回り終え、次の得意先の駅に速くついてしまった。パソコンで20分ぐらいメールチェックをしたい。ここまで打合せ続きで電池が切れそうなので少しでも電源供給出来るとベター。


この場合、スターバックスは以下のように様々なことをリ・デザインする必要が出てきます。

駅チカの立地。駅からちょうど降りた改札近くにスタバがあることを訴求。公衆Wifiはセキュリティ的に無理だろうけどPCの電池も切れ始めてるので電源の供給は必要。そんなに長居はしないので席もゆったりな感じというより、前のめりで座りやすいもの。どちらかというと左右の人からモニタが見えないような仕切りが必要。時間もないだろうから金額設定もお釣りが出ない感じのほうが良いかも。などなど。

こんなに簡単な例でもこれだけの必要なことが見えてくるので、もっとユーザーを特定し、利用状況を調査していくと、さらなる気付きが得られることでしょう。

ユーザーと利用状況を特定し、ユーザーの定性的な調査を実施することで得られるファインディングは時にビジネスの本質に関わることだったりするので、実現可否はともかくとして、考え方のスケールが小さくなる懸念はなさそうです。(スケールを大きくすることが目的の手法ではないのですが往々にして。)

解析もUXDも必要

じゃあUXDだけやってれば解析が不要かというと、そういうわけではなくて、定量的な調査と定性的な調査とそれぞれ必要なシーンや得意領域に応じて使い分ける必要があります。

定量的な調査の必要性は言わずもがなですが、解析だけではユーザーが本質的にどんな欲求を持っているのか、といったことや、ユーザーがそのサービスを使ってどんなポイントに楽しさを感じてくれたのか、といったことはわかりません。

もちろんUXDが大して必要のないサイトの種類というものも存在しますが、タスク達成型のサイト構築や、サービスのデザインをする、といった目的にはこうした定性的なデータが非常に重要なファインディングにつながりやすいので、もっと活用すれば良いのにな、と常々思っています。

定性的なデータからのファインディングの意義がいまひとつわからない、という方には、一度簡単なテストシナリオで思考発話法で自分のサイトをユーザーテストしてみることをオススメします。設計者とユーザーのギャップにびっくりすることも多いと思いますよ。

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補足:やりとりで感じたけど長くなりそうだった雑多な話
最後に補足として、@egachanさんとやりとりしていくつか感じたUXDに関する意見を少し雑多ですが記述しておきます。

戦術部分は先進的な他サイトが行動観察的なアプローチをもとに最適化したものを模倣ということで、ある程度エコシステムが出来るのかなと思っています!笑 (もちろん、私は新しい戦術を発見していきたいです!)

引用@egachanのtweet

→UIという意味ではおっしゃるとおりですが、そのUIがもたらすUXという意味ではどうでしょうね。例えば、ドトールがスタバのソファを真似たとしてすわり心地(UI)はよいかもしれないけれど、ドトールで体験して欲しい体験(UX)に照らして適切かどうかはわからないからです。もちろん実際のWeb制作の場面ではどう考えても同じニーズに対応する表現として良いインタラクションを他サイトがしているならば、真似することでエコシステムが実現することも当然あります。しかし、前提として同じニーズかどうか判断する必要があるので、少なくとも自社サイトに訪れるユーザーのコンテキストは把握しておく必要があると思います。
コストやスケジュールなどの制約条件は以前から指摘されているところで、rapidUXとかleanUXとかってよく議論されていたりしますがまだ汎用的な手法に落ちてない印象です。今の段階でコストを抑えたいということであれば、全てに行動観察的アプローチをするのではなくて、ユーザーの特定とユーザーコンテキストの把握まではコストをかけ、評価は解析を中心に実施する、というだけでも随分違うかな、という気はします。

私の個人的な意見としてはほぼ全ての行動分析はアナリティクスで出来ると思うのですが、

引用@egachanのtweet

→ほぼ全て、という意味では概ね賛成ですが、その解析から得られない定性的なデータにすごく意義あるものが落ちていることがあります。特にサービス開発の初期段階ではユーザー調査を一度挟んでおくと今後のサービス開発後の設計にも良い効果が期待出来ます。

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関連資料
IMJが以前大規模なセミナーやった時にUXDに関して話した資料。かなり平易に書いてありオススメです。よかったら。


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